住まうほどに風合いを増す四季の移ろいを感じる家

　白神山地が一望できる絶好のロケーションに立つS邸。丹精込められた庭と木の外観とが相まって、まるで絵本から飛び出してきたかのような印象さえある。妻のTさんは植物のつるや石、流木などを素材にオブジェなどをつくる造形作家。定年を迎えた夫のSさんと二人で庭づくりと畑づくりを楽しみながら、自身の創作のための材料集めに山や海に出かけることもしばしばだという。
　Sさんの両親と、2人の息子さんらと2世帯住宅で賑やかに暮らされてきたというSさん夫婦。子どもの独立などを経て、夫婦二人の生活を迎えるにあたっての家づくりだった。「以前住んでいた家は住宅街にあったので、今度は自然に囲まれた暮らしがしたいという思いが強くありました」とTさん。家を建てるなら建築家の今井さんに依頼するつもりで何年もかけて内覧会にも足を運んできたという。
　夫婦二人の静かな暮らしに多くの部屋数や広いスペースは必要ないと考えたSさんたちには平家のイメージが当初からあったという。住み始めて10年経つというS邸は、耳付き一枚板の天然秋田杉のカウンターや無垢のフローリングにも艶と風合いが出ている。
　「キッチン側の窓は今井さんのご提案で、白神山地と五能線が両方楽しめるわが家の絶景スポットになりました。常に自然を感じながら、景観とともにある暮らしを日々、楽んでいます（Tさん）」。