WORKS JUU掲載の施工事例

CASE30 奥羽住宅産業 / T邸

人とのつながりを大切に。3世代同居の誰もが来やすい家

 昌東院は遡れば安土桃山時代に創建された由緒正しいお寺だ。目の前に広がる青々とした田んぼを渡る風が、背後の山に向かって吹き抜けていく。ときどき聞こえてくる鳥の鳴き声や、川の水音が心休まる場所に、22代目住職である辻さんの住宅部分も併設されている。
 建て替えにあたり、辻家では「誰もが来やすい家」というリクエストを出した。もともと檀家さんなど来客の多い辻家だが、大きく意識が変わったのは東日本大震災のとき。ライフラインの手助けや、避難所など、有事下のお寺としての役割を再認識。「何かあったときに駆け込める場所でありたい」という思いを新たにしたのだという。そのため、停電時でも使用できるエコウィルプラスを導入。「何かあったときに、檀家さんでもそうでなくても困っている人がいれば入ってもらって、何もなくても寒い思いだけはしないで過ごしてもらえるようにしたかったんです(辻さん)」。
 そんな辻家だけに、家づくりもお寺中心。外観はお寺の本堂となじむよう、一部塗り壁と秋田杉の腰板を使うなどして工夫されている。1階部分はほぼお堂の延長のような形で、1階の納戸は住職たちが衣装替えをするためのスペースだし、広い土間には立派な秋田杉の式台が設置され、来客が気兼ねなく腰かけ、ちょっとした近況を言い言いして過ごせるようになっている。この土間には床暖房機能もあり、冬の間の融雪はもちろん、来客が寒い思いをしなくてもすむようにとの配慮がなされているのである。
 式台やリビングだけでなく、目に見えない骨組みにまで秋田杉を使うのも奥羽住宅産業の特徴。「奥羽住宅産業さんには秋田を元気にしたいという思いがあって、そこに共感した部分も大きかったんです」と家づくりを振り返る辻さん。「家は建てただけで終わりではない。何かあったらすぐに飛んできてくれるかどうか、不自由を感じるようになったら対応してくれるかどうか。それがいちばん大事なことだと思う(辻さん)」。

DATA
床材フローリング、クッションフロア(水回り)
壁材クロス
窓仕様アルミ樹脂複合サッシペアガラス
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材ジョリパット塗り壁、一部杉羽目板、 窯業系サイディング

設計 / 奥羽住宅産業株式会社 | 施工 / 奥羽住宅産業株式会社 | 竣工 / 2014/11
構造・工法・規模 / 木造・在来工法・2階建 | 敷地面積 / 273.12㎡(約83坪) | 床面積 / 145.73㎡(約44坪) / 1階 79.49㎡(約24坪) / 2階 66.24㎡(約20坪) / バルコニー 3.3㎡(約1坪)

暖房設備 / 床暖房、ファンヒーター(ガス) | 給湯設備 / エコジョーズ | バス / LIXIL キレイユ | トイレ / LIXIL アメージュ | キッチン / LIXIL アレスタ | 調理設備 / ガス

建築総工費 / 2,500万円台
坪単価 / 55~60万円