家の歴史を引き継ぎ 次世代につなぐリノベーション
緑豊かな田園地帯が広がる、秋田市郊外の集落にS邸はある。大正時代に建てられた築100年に迫る古民家に、堅牢な骨組みと土台を生かしてフルリフォームを実施した。「私からさかのぼって5代前から改修を重ねながら住み継いできた家。さらに家族の歴史を重ねて子孫に渡していけるものになりました」と、施主のSさんは誇らしそうに話す。ここで、子ども家族を加えた4世代暮らしをスタートさせている。
両開きの玄関ドアを入ると、仕切りのない大空間が広がる。正面には、落ち着いたグレーの色調のアイランドキッチン。家族が集まるこのキッチンを中心にして、リビング、ダイニングがひと続きになっている。見上げると、屋根までの高い空間に漆黒の梁や柱が縦横に伸び、白い壁に映えるさまが美しい。過去の改修で天井が張られていたのを撤去したところ、ノミの削り跡が残る天井裏の梁の数々が姿を現したという。
「壁に傷みがあって隙間風が入り、冬はとにかく寒かった」とSさんが話す通り、リノベーションの大きな目的の一つは建物の気密性を高めることだった。土台はそのままに、床と外壁、そして天井に断熱工事を
施した。加えて、Sさん家族念願のベルギー製の薪ストーブを設置。間
仕切りが少ないため、薪ストーブの暖気がLDKにいきわたり、冬季で
もエアコンの出番がないほど暖まるのだという。じかに炎が見られて心が休まる効果があり、料理ができるのもうれしいポイントという。
LDKと同様に重視したのが、家族の個室だ。「それぞれの生活時間と趣味も大切にしたかった」とSさん。Sさんと妻のCさん、母親にそれぞれ個室を確保している。住宅の各所には、大切に使ってきた建具などが再利用されていて、古いものと新しいものが調和した居心地よい雰囲気づくりに一役買っている。「旅館のような雰囲気で、家で過ごす時間がとても楽しいです」とCさん。LDKを眺めながらSさんは「もうしばらくしたら、広い家の中を孫が元気に走り回ることでしょう」と話
し、これからの多世代暮らしに期待を膨らませている。
DATA
床材 | 複合(合板)フローリング、 クッションフロア |
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内壁材 | ビニールクロス |
屋根材 | ガルバリウム鋼板 |
外壁材 | ガルバリウム鋼板 |
設計・施工 / 積和建設東北株式会社 | 竣工 / 2020/12 | 構造・工法・規模 / 木造伝統工法・1階建 | 敷地面積 / 1186.11㎡(358.79坪) | 床面積 / 194.67㎡(58.88坪) / 1階 194.67㎡(58.88坪)
暖房設備 / エアコン(電気)、薪ストーブ(メトス ドブレ製) | 給湯設備 / エコキュート(電気) | バス / 積水ホームテクノ バスサルーン | トイレ / LIXIL プレアスHS | キッチン / クリナップ セントロ | 調理設備 / IH | 窓仕様 / 樹脂サッシLow-Eペアガラス | 断熱材 / グラスウール | 換気システム / 第1種換気
建築総工費 / 2,900万円台
坪単価 / 45~50万円