WORKS JUU掲載の施工事例

CASE191 花田建築設計 / S邸

建築家ならではの発想で 線路沿いの変形地を快適な住まいに

 玄関に足を踏み入れるとコンクリート土間に面したダイニングとキッチンが見え、中2階のリビングの大きな窓から光が差し込む。リビングのある中2階のフロアに立つと、2階に和室、子ども室とその上のロフトが見えてくる。ここまでジグザグとフロアが移動するプランはめずらしいが、Sさん家族が思い思いの場所でそれぞれに居心地が良さそうにくつろいでいる様子が印象的だ。
 線路沿いの変形地に立つ築30年の中古住宅を両親から譲り受けたSさん夫妻。家のすぐ下には車道も通っている。「リフォームはしたものの寒いし、騒音も気になって」とSさん。ビルダー探しのなかで具体的にプランを描いてもらったりもしたが、「どれも今ひとつしっくりこなかったけれど、『この土地じゃこんなものなのかな』と半ば諦めかけていたときに、花田さんに出会ったんです」と家づくりを振り返る。
 建築家の花田さんは「ここは南に面した道路を朝から夜まで人が通っていく土地です。さらにSさんはバイク、アウトドア、ゴルフと多趣味で収納が必要、となったとき、外部の床下収納を作ってその上にリビングを乗せる、スキップフロアのプランが浮かびました」と話す。
 “音は水平に直進する”という性質に着目した花田さんは、リビングを半層上げることで線路の騒音を和らげるプランを提案。さらに客間としての和室、寝室、子ども室のほかに、収納スペースとしても空間的な楽しさを感じる場所としても有効なロフトも確保している。「敷地が限られていることもあるので、上へ伸びていかざるを得なかったということもありますが、最後にロフトをつけることができて実用面でも住まいとしても充実したものになった」と振り返る。
 新居での暮らしは前の住まいと比較すると「土地は同じなのに、ほとんど別物」とSさん夫妻は口をそろえる。Sさんは「家の外で大人数でのバーベキューをやるなど生活のアクティビティが広がりました。家で過ごす時間が楽しみで、早く帰宅するようになったかな」と笑う。

DATA
床材無垢(オーク)、Pタイル
内壁材ビニールクロス
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材ガルバリウム鋼板

●設計/有限会社花田設計事務所 ●施工/株式会社石川建設 ●竣工/2018/9 ●構造・工法/木造軸組工法 ●規模/2階建 ●敷地面積/117.51㎡(35.54坪) ●床面積/115.93㎡(35.06坪) 1階 59.08㎡(17.87坪) 2階 56.49㎡(17.08坪)

●暖房の種類╱パネルヒーター、ファンコンベクター(ガス) ●給湯の種類╱エコジョーズ ●バス╱LIXIL アライズ ●トイレ╱LIXIL アメージュV ●キッチン╱サンワカンパニーグラッド45 ●調理器具╱ガス ●窓仕様(主なもの)╱樹脂サッシ Low-Eペアガラス ●断熱材╱グラスウール ●換気システム╱第3種換気

建築総工費 / 2,600万円台
坪単価 / 75~80万円