WORKS JUU掲載の施工事例

CASE160 花田設計事務所 / T邸

既存の農家住宅と現代建築をなじませ、 まちの景観を更新する家

 三角の大屋根を中心とした印象的な外形のT邸。一見奇をてらったように見えるかもしれないが、この形にこそ、当住宅のコンセプトが詰められている。テーマは「継承」だ。T邸の背後に建つ母屋は、大潟村の開拓時代に建てられた入植者向けの住宅。当時の開拓者住宅が残るまちなかにあって、景観になじみつつ、景色を更新していくような建物を目指したと設計者の花田さんは話す。写真からも屋根の大棟がきれいに揃っているのが見てとれるはずだ。そうするとこの個性的な外観は、脈々と続く家族の歴史が時とともに刻まれていく、その証なのだという建築家の解答に次第に合点がいくようになる。
 中に入ると外観とは異なる印象に驚く。基本的には1階ですべての生活が完結する間取り。母屋とも玄関を通じてつながる。2階の子ども室はそれぞれのキャラクターに合わせた空間になっている。妻のYさんは「社宅からこの家に引っ越してから、家の中が散らからないんです」という。外のテーマが「継承」なら、中のテーマは「朝、5分早く出られる家」なのだと花田さん。「生活動線は、実は家族によって違います。家族構成はもちろんですが、家族ごとに生活のパターンが違うので、家族によって生活動線はリチューンされてしかるべきなんです。家事を効率的にこなせることは大前提。その上でどう生活を彩るかが家づくりでは大切なことでは」と話す。Yさんは「『ああ、ここをこうすればよかったなぁ』っていうことが本当にないんです。暮らしながら、いつも設計者のメッセージを受け取っているような不思議な気持ち」という。
 Tさんはいう。「社宅暮らしも長く、実家からずっと離れていました。自分の家を建てて思うのは、『帰ってきたなぁ』ということ。単に新築だからということだけでなく、自分たちのこだわりを形にしたからということでもない。家族の歴史や生まれた土地の記憶が反映されたデザインの家だからなのかもしれないと思います」と。

DATA
床材無垢(オーク)、P タイル
内壁材ビニールクロス
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材木材(杉)、ガルバリウム鋼板

●設計 有限会社花田設計事務所 ●施工 株式会社西村建設 ●竣工 2018/4 ●構造・工法 木造軸組工法 ●規模 2階建 ●敷地面積 701.59㎡(212.23坪) ●床面積(総)115.93㎡(35.06坪) 1階 86.12㎡(26.05坪) 2階 29.81㎡(9.01坪)

●暖房の種類╱パネルヒーター、ファンコンベクター(灯油) ●給湯の種類╱エコフィール ●バス╱LIXIL アライズ ●トイレ╱ Panasonic アラウーノ ●キッチン╱Panasonic L-CLASS ●調理器具╱IH ●窓仕様(主なもの)╱樹脂サッシLow-Eペアガラス ●断熱材╱グラスウール、EPS(ビースポリスチレン) ●換気システム╱第3種換気

建築総工費 / 2,400万円台
坪単価 / ╱65~70万円