WORKS JUU掲載の施工事例

CASE119 加藤一成 建築設計事務所/ S邸

なぜ好きか? に理由はない 建築マニアがこだわったRC

 「家」と言えば、木造が一般的。RC(鉄筋コンクリート)造の住宅は極めて稀だ。本誌としてはじめてのRC物件の施主であるSさんは根っからの建築好き。自分の家を持とうと思ったときから、建築家との家づくり、そして、その家はRC造と決めていたという。「誰にお願いするかが問題でした。1級建築士ならRC造を設計できると言っても、実際にRC造の住宅を設計したことのある建築家は少ない。加藤さんは自宅をRC造で建てている。それ以上に説得力のあることはなかった」と依頼を決めた。
 RC造にこだわっていたSさんだが、一度、RC造を諦めかけたことがあったという。「最初の建築予定地が区画整理の計画地で、RC造で建築できないということがあったんです。そのとき、加藤さんから『木造でも同じような住宅を建てることができるが』と提案されて、大袈裟ですけど、『試されている』と思いました」とSさん。折れずに、一から土地探しを続けたという。「RC造にはコンクリートでしか出し得ない質感や雰囲気があるが、予算も増えるし、木造でもできる規模の住宅をRC造でというのはよほどのマニア。本当に好きじゃないとできない」と加藤さんも当時を振り替える。
 家づくりでは、予算的な制約の中で、どう希望を実現させていくかが難しくもあり、楽しかったという。希望は「外に閉じて内に開く家」。ファサードには窓一つ設けなかったことで、RC造が一層強調され、一方で室内は暖かみのある木材とコンクリートがバランスよく同居している。そして、2階リビングはRC造ならではの大開口で、2階面積のほぼ半分はテラスだ。こうしたデザインやインテリア、間取りもSさんの希望だったそうだ。「素人の自分が、どこまで口を出していいものかとも思いましたが、加藤さんが『言いたいことは全部言ってくれ』と言ってくれて、建築家と一緒に考えながら家を建てている実感がありました」とSさん。一緒に悩んで、一緒に汗水流して建てたという実感があるからこそ、建築から10年が経った今も、毎日、家に帰るのが楽しみだそうだ。

DATA
床材複合(合板)フローリング
内壁材シナ合板 EP
屋根材断熱塩ビシート防水
外壁材コンクリート

設計 / 株式会社加藤一成建築設計事務所 | 施工 / 株式会社石川建設 | 竣工 / 2007/2
構造・工法・規模 / 鉄筋コンクリート造・2階建 | 敷地面積 / 322.68㎡(97.42坪)|床面積 / 127.04㎡(38.35坪)/ 1階 78.96㎡(23.84坪) 2階 48.08㎡(14.52坪)ルーフバルコニー 28.8㎡(8.69坪)

暖房設備 / 床暖房(灯油)| 給湯設備 / 灯油式給湯ボイラー | バス / 造作 | トイレ / 1 階 INAXタンクレス | キッチン / TOTO フレームキッチン | 調理設備 / ガス | 窓仕様 / アルミサッシペアガラス | 断熱材/ XPS(押出ポリスチレン)、吹付ウレタン | 換気システム / 第1種換気

建築総工費 / 3,000万円台
坪単価 / 75~80万円