家は暮らしのステージ 住み手が思い出を刻む場所

　家を建てるなら、自分たちの暮らしに本当に合った、オリジナルの家がいい。家づくりの当初からそう考えてきたTさん夫妻。いくつも内覧会や展示場に足を運んだものの、限られた予算の中でそれを実現できそうなビルダーがなかなか見つからなかったという。
　内覧会で見学に行った花田建築設計事務所で初めて、「ご予算のなかで、きちんと暮らしに合った家を作ることは可能です。ただ、そのときは余剰を割り切る必要があるでしょう」と、建築家の花田順さんに言われたとき、Tさんは意外だったという。「今までは『その予算じゃ無理ですね』と言われてばかり。『可能』という言葉に、『この人にお願いすれば大丈夫かもしれない』という一筋の希望が見えました」とTさん。
　花田さんからテキパキと提案を受けるなかで、断熱や床の仕様、ウッドデッキの大きさなど本当に自分たちの暮らしに必要なものが見えてきたという。妻のMさんは「一筋の希望が、『この人なら大丈夫』という確信に変わりました」と当時を振り返る。
　この家の大きな特徴となった斜めの壁の内側は、Tさんの趣味であるフットサルのトロフィーなどを飾る展示スペースである。「とても難しい工事だと言われましたが、花田さんと大工さんが図面に首っ引きで効率性を考えてコストをコントロールしてくださって。それでも妥協しないでいいものを作るという姿勢には感動しました」とTさん。
　密集地に建つ小さくまとめられた家は、夏の日射を効果的に遮り、冬日を屋内にもたらすように設計されている。セカンドリビングのように広がるウッドデッキは「バーベキューをやりたくて当初から希望としてお話ししていましたが、住んでみると縁側のような役割も果たしていて、ここに近所の子どもたちが遊びに来たりもします」とTさん。「花田さんとの家づくりは、生活に対する理想を実現するためのステージを作っているようなイメージでした。唯一無二の家にしていただいて、本当に大満足です」と家づくりを振り返った。