敷地を対角線に切った ダイナミックウェッジハウス

　設計した花田順さん命名の「Wedge」。その名のとおり、S邸は大胆なくさび型（V字）だ。
　Sさん夫妻と花田設計事務所の出会いは2012年。夫妻が家づくりを考え始めてから2年が経った頃、広告で目にした内覧会だったという。「建築家にお願いすることになるとは思っていませんでした」という妻のHさんの言葉どおり、あくまで選択肢の一つにすぎなかったそうだ。見学した住宅に惹かれながら、その後も他のビルダーの内覧会巡りを続けた。
　そんな夫妻にとって2軒目の花田設計事務所の内覧会。施主の暮らしに合ったオリジナル感、住宅と庭の一体性、デザインを優先した結果ではない機能美に衝撃を受けたという。そして決め手となったのが、「同じ住宅ローンを払うなら、気に入った家に払ってもらいたい」という花田直子さんの一言だった。
　かくして始まった夫妻の家づくり。外観からは想像できないほど、「そんなにこだわりがあったわけではなかった（Sさん）」そうだ。敷地を対角線に切ったダイナミックなウェッジハウスは、デザインではなく、「日射を最大限取り込みながら、家のどこにいても庭とつながっている家」という夫妻の希望を反映した結果。「特徴的な家だと思われるんですが、私たちの暮らしに合った普通の家なんです」とHさん。
　家のどこにいても家族の気配を感じられるようにと設計された室内。ダイニングを中心とし、そこからつながる2階には花田順さんからのプレゼントともいえる「ハウスインハウス」をイメージした吹き抜け階段。さらに、ダイニングと掃き出しの窓でつながるウッドデッキを囲むようにリビング、キッチン、和室が配置され、たしかにどこにいても庭とつながる。「はじめは想像もしていなかった」という建築家との家づくりは、Sさん夫婦の希望をすべて叶える家になった。