地域のつながりと手仕事を生かした 木のぬくもりあふれる空間
妻のNさんは建築士の資格と大工の経験があり、古民家再生などの仕事をしている。自邸については、基本設計からインテリアデザインに加え、大工とともに木材の加工に携わったという。「この家の気に入っているところは?」と尋ねたところ、「内壁の漆喰はすべて二人で塗りました。とにかく自分たちでやりたかったので」とFさん夫婦は笑顔で語った。
F邸は、東北の民家建築でも多く用いられてきた「田の字プラン」を採用。2間(約3.6メートル)ごとに柱を置いた四角形を基本に間取りを構成する。「田の字型ですと構造がシンプルで、梁が掛けやすく強度も保てます」とNさん。四角のユニットの広さは8帖で、図面を見るとユニットを組み合わせた田の字の中に玄関とLDKが収まっていることが分かる。Nさんは伝統的な工法を用いるのと併せて、夏は涼しく冬は暖かい高気密高断熱の家にしたいという希望があり、両方の技術において親和性の高い西方設計に協力を依頼した。
グランドピアノがゆったり収まる吹き抜けのLDKは、無垢のクリ材の床とスギ張りの天井という木の温もりあふれる空間。さらに、削り跡が見える現しの梁や、古建具など、新しいものと古いものが違和感なくなじんでいる。また、造り付けの収納が少ないことも大きな特徴。「ライフステージに応じて使いやすいように固定の家具などは極力減らして、必要なときに必要なものを作れればと考えました」とNさん。キッチン収納や子ども部屋の間仕切り収納などのほとんどを、大工の経験もあるNさんを中心に夫婦自らDIYで整えたというから驚きである。
「地域のつながりを生かして、工務店や設備会社など地元の業者さんと共同でできてよかったです」とFさん。Nさんも「すべての過程が楽しかったですね。振り返ってみても大変だったとは思わないくらい」と話す。これからも、家族の状況に応じて手を入れながら末永く住みこなしていくのだろう。
DATA
床材 | 無垢(ナラ)、磁器タイル |
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内壁材 | 塗り壁(漆喰)、ビニールクロス |
屋根材 | ガルバリウム鋼板 |
外壁材 | 木材(赤身スギ板) |
設計 /有限会社西方設計 | 施工 / 株式会社藤井工務店 | 竣工 / 2022/11 | 構造・工法・規模 / 木造軸組工法・2階建 | 敷地面積 / 507.89㎡(153.63坪)|床面積 / 144.9㎡(43.83坪)1階 130.83㎡(39.57坪) 2 階 14.07㎡(4.25坪)
暖房設備 / エアコン(電気)| 給湯設備 / エコフィール(灯油)| バス / TOTO ハーフユニットバス | トイレ / TOTO GG1 | キッチン / EIDAI×渡辺パイプシステムキッチン304 | 調理設備 / ガス | 窓仕様 / 樹脂サッシLow-Eトリプルガラス | 断熱材 / グラスウール | 換気システム / 第1種換気 | Q値╱0.76W/㎡K| UA値╱0.21W/㎡K| C値╱0.30㎠/㎡
建築総工費 / 3,500万円台
坪単価 / 95~100万円