ヒートテラス兼土間空間 自由に過ごせる循環型の家に

　南南東に面した敷地に対して大きな窓が印象的なT邸。内側にはコンクリートの土間空間が設けられている。施主のTさんは「秋田の風土に根ざした家を希望していました。土間は風除室の代わりになるし、庭と室内のアクセスもスムーズになって、子どもたちの遊び場にもいいだろうと」と語る。
　建築家の今井さんはこの空間に、土間としてだけでなく、太陽熱を集めて採熱し、温度上昇した空気を室内に入れることで冬場の暖房負荷を和らげる役割も持たせた。妻のSさんは「今井さんには『お日さまの力をうまく使えるような家にしてください』とお願いしました。この土間のおかげで室内の温度が5℃ 前後違うそうです。野菜を干したり、植木を置いたりと、このスペースを自分なりに使って暮らしをふくらませています。自然の力を合理的に使った循環型の住まいを希望していたので、今井さんにお願いしてよかったです」という。
　Tさんは「今井さんには、『光と風が通って、家族のコミュニケーションが取りやすい、シンプルで機能性の高い家を』とお願いしました。木をふんだんに使った住宅を希望していたことから今井さんにご相談したのですが、ライフスタイルも含めて、今井さんには教わることがたくさんありました」と話す。ヒートテラスの合理性、暖房器具や雪対策についてなど、秋田の気候を熟知したビルダーと出会えたことで得たものは多く、「建築の一つ一つに納得できたから、住みながら家のよさをさらに実感できる気がします（Sさん）」と住んでからの実感を語る。
　庭はすべてSさんが自ら植栽を施したもの。「土や緑があるところに生き物がたくさん来て、それを子どもたちと一緒に楽しんでいます」とほほえむ。4人の子どもがいるT邸にとって、家そのものが子どもたちにとって遊び場であり、教育の場にもなっているようだ。