WORKS JUU掲載の施工事例

CASE127 花田設計事務所 / H邸

光や空、景色や時の移ろいも インテリアにする家

 ファサードの窓が印象的なH邸。約200坪の広い敷地は南東側の道路から3メートルほど高いところに造成された変形地のため、建物の前に遮るものがなく、窓からの眺望を独占できる立地にある。「外の景色がそのままインテリアになっている気がします」と施主のHさん。ファサードに向かう窓がまるでフレームのように近隣の町並み、裏山の緑、あるいは刻々と色を変える空を切り取る。
 プランで特徴的なのはダイニングとリビングが非常に明瞭に分けられている点だ。ダイニングには食事という明確な目的がある一方、リビングは使用方法が人それぞれなので、求める機能が異なるというのがその理由だった。用途は明確に分けながら、仕切りのないワンルームであることで「お互いの気配は感じながらも、それぞれが自分のやりたいことに集中できるのが、私たち家族には合っていると思いました」と妻のNさんは言う。
 暮らして1年が経った今も「家での暮らしのなかにたくさん発見があります」とNさん。「『花田さんはこんな使い勝手の良さを考えてくれていたのか』『こんな美しい景色をイメージしてくれていたのか』と日々思うんです。子育て中で自分でももっと掃除や整理をしたいと思うこともありますが、花田さんの建てた家は、住みやすいので自然と美しく暮らせる。そうやって家が優しいと、心も優しくなるなと実感しています」と柔らかい表情で語る。
 設計者の花田順さんは「家は家族が安全に暮らせるための“道具”でもあります。美しいだけの住宅をつくるより、普通に暮らしていて心地よく、道具としての機能をきちんと備えた住宅をつくるほうが実は難しい。長い期間の使用に耐えることも大変重要です。ご家族によって『使いやすさ』の形はそれぞれ。他の誰でもない、施主とそのご家族の生活にきちんと向き合った解答を出せるのは、設計者ならではの仕事かもしれません」と語る。
 住宅という建築物に「生活」という時間が少しずつ積み重なるにつれ、花田さんがいう″道具″としての家の真価が発揮され、ますます良さを増していくのだろう。

DATA
床材無垢3層フローリング(オーク)、
Pタイル
内壁材ビニールクロス
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材木材(焼杉)、
ガルバリウム鋼板

●設計 有限会社花田設計事務所 ●施工 株式会社石川建設 ●竣工 2017/5 ●構造・工法 木造軸組工法 ●規模 2階建 ●敷地面積 637.04㎡(192.70坪)●床面積(総)178.67㎡(54.04坪)1階 118.22㎡(35.76坪)2階 60.45㎡(18.28坪)ガレージ 35.41㎡(10.71坪)

●暖房の種類╱温水床暖房(ガス)●給湯の種類╱エコジョーズ ●バス╱TOTO ハーフバス08 ●トイレ╱パナソニック アラウーノV ●キッチン╱サンワカンパニー グラッド ●調理器具╱ガス ●窓仕様(主なもの)╱アルミ樹脂複合サッシLow-Eペアガラス ●断熱材╱グラスウール、フェノールフォーム、EPS(ビースポリスチレン)●換気システム╱第3種換気

建築総工費 / 3,800万円台(税別)
坪単価 / 70~75万円(税別)