一人暮らしの「１」に可能性をプラスできる家

　施主のKさんは住宅建築が好きで、雑誌を見たり、知人友人の住宅を見ながら「家を持つなら、キッチンはこれ、トイレはこれ。内装は全部白で、あまり生活感が出ないように暮らしたい」というように、以前から明確なイメージがあったのだという。とはいえ、「どうしても家を持ちたい」と強く思っていたわけではない。せっかく自分の家を持つのなら微に入り細に入り自分の思うとおり建てたい、という思いがあり、「それをかたちにできるところなんてないんじゃないかと思っていましたから」とKさん。それがたまたま建築家の加藤一成さんに会い、「仕事がきちんとできて、プライベートも充実する、スイッチのオンとオフができるような空間がほしい」というコンセプトを伝えたところ、最初のラフプランで、思い描いていたイメージが見事に具現化されているのに感激。そこから最終プランまでの道のりと決断は早かった。
　「加藤さんと家をつくりあげていくことはすごく楽しかった」とKさん。アトリエはギャラリーやオフィス等、多目的に使用可能。可変性のある使い方が可能な設計になっている。
　驚くべきことに、Kさんは工事の発注も自分で行ったという。設計監理はプロである加藤一成建築事務所に依頼したものの、知人の施工会社などでぜひお願いしたいところがあり、値段の交渉や日程の調整などのやりとりなども自らおこなったということで「こういうケースは非常にめずらしいです」と加藤一成建築設計事務所の菅原さんも感心したように語る。建材も一つ一つ自分の納得のいくまで探して、施主支給。「一言で『白』といっても、施主の私がイメージする白と、大工さんがイメージする白が違っていた、ということがあって。途中で、『これじゃ、私の家じゃない！』と、工事の内容を変更してもらったこともありました。職人さんたちに自分のイメージを理解してもらうのは大変でしたね」と振り返って笑顔で苦労を語る。そんなKさんの人となりを表すように、凛とした佇まいの家になっている。