WORKS JUU掲載の施工事例

CASE77 納屋建築設計事務所 / N邸

「ダブルスキン」が鍵になった 北国の家の建築的回答とは

 水回りの不具合や室内の暗さに辟易し、35年住み続けた家を思い切って建て替えようと決めたとき、夫妻とも70代に入っていたそうだ。建築を依頼したのは、納谷建築設計事務所。施主とは親子関係にあたる。つまり、建築家の納谷学さん+納谷新さんの実家の建て替え物件として、この住居の計画はスタートしたのだ。
 当初からプランに入っていたのが、生活スペースをぐるりと囲むように巡らされた廊下。「秋田の冬はとにかく寒い、というのが実家で暮らしていた頃から身にしみていました。空気層はもっとも効率的な断熱になります。そこで廊下で居住スペースを囲んで、引き戸や壁でいわば雨風を防ぐ堅牢な外壁と、自由に開け閉めできる柔軟な内側の囲いの二重構造の建物にしたわけです」と語るのは納谷学さん。納谷新さんも「実はこの構造は昔ながらの土間空間に似ています。昔ながらの建築には気候や風土に根ざした家のかたちが、ちゃんとできあがっているなぁと、この家を設計して改めて感動しました。そういった先人の知恵をきちんと解釈さえすれば、ちょっとした作り方や工夫に生きてきて、結果として現代の生活になじみながら、ちゃんと北国ならではの空間になるということに気づいた設計でした」と語る。廊下に面した居室は太鼓貼りの障子で区切ってあるが、そこで使われているのは和紙ではなく、ワーロンである。このように昔ながらの知恵をふんだんに採用しながら、現代らしい技術を無理なく使うことで、70代からの新居はしっくりと暮らしになじんでいったという。「『70代で建て替えなんて』という人もいたけれど、私たちは『あとちょっとだからするのよ』なんて返していました」と朗らかに笑う二人は、なんと80代。この家に住み始めて11年が経ったそうだ。

DATA
床材複合(合板)フローリング、磁器タイル
内壁材塗り、タイル(水回り)
窓仕様アルミサッシペアガラス(防火対応)
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材ガルバリウム鋼板
断熱材グラスウール

設計 / 納屋建築設計事務所 | 施工 / 成田建業 | 竣工 / 2005/4
構造・工法・規模 / 木造軸組工法・2階建 | 敷地面積 / 449.52㎡(135.71坪)| 床面積(総)/ 177.62㎡(53.62坪)/ 1階 64.00㎡(19.32坪) 2階 88.81㎡(26.81坪)ビルトインガレージ 24.81㎡(7.49坪)

暖房設備 / エアコン、床暖房(電気)| 給湯設備 / エコジョーズ | バス / TOTO ネオマーブバス | トイレ / TOTO SD-1 | キッチン / 造作 | 調理設備 / IH | 換気システム / 第3種換気

建築総工費 / 2,900万円台
坪単価 / 50~55万円