親世代・子世帯が ほどよい距離でつながる家

　親世帯、子世帯が適度な独立性と良好なコミュニケーションを保てるように配慮した、完全分離型2世帯住宅のＳ邸。親世帯との同居を選んだ理由は「おじいちゃん、おばあちゃんから子どもたちはいろいろなことを学べるし、一緒に過ごすことで心が和らぐと思うんです」とＳさん。以前、両親が住んでいた家は、古く暗くて、間取りにも不満があり、同居は難しい状態だった。ならばと決意して2世帯の家づくりはスタートした。
　当初、地元工務店かハウスメーカーでの家づくりを想定していたが、「せっかくだから一度、建築家に相談してみよう」と方向転換。建築家の加藤一成さんに出会い、「出していただくプランが、毎回想像以上に素晴らしくて感激しました（Ｓさん）」と加藤さんとの家づくりを振り返る。
　家の前の道路側に平屋の親世帯、その奥に2階建ての子世帯を配したＳ邸。玄関や水回り、キッチンなどは親・子世帯それぞれに設けられて分離しているが、2世帯は玄関回りの収納でつながっているのでいつでも気軽に行き来できる。
　「完全分離型」を提案したのは加藤さん。フルタイム共働きのＳさん夫妻のことを考え、仕事から帰りが遅くなっても親世帯に気兼ねなく家事をしたり、水回りを使ったりできるようになど、それぞれのライフスタイルを尊重できる住まい方だ。子どもたちは両親が不在の間、祖父母世帯で楽しく過ごしている。子世帯の家は敷地奥の北側に位置するが、吹抜けに設けた透明なキャットウォークを通して南側から日差しが入るので室内は十分に明るい。
　Ｓさんは「互いにストレスなく、快適に暮らしています。自分たちの暮らしにぴったり合う設計をしてもらえて、加藤さんにお願いして本当に良かったです」と微笑む。