WORKS JUU掲載の施工事例

CASE59 花田設計事務所 / M邸

「空に開く」建築家的回答 出会いがつくり出した家

 「長かったですけど、全てが必要な時間だったように思います」。Mさん夫婦は家づくりを振り返る。花田設計事務所との出会いは妻のSさんだった。「最初から建築家との家づくりを考えていたわけではないんです。土地が決まるまでも時間がかかったし、やっと決めて、いくつかのビルダーさんにプランをお願いしたんですけど、プランや予算が合わなかったりで。そんな時、花田(順)さんだったらどんな提案をしてくれるのかと思って」とSさん。Mさんに内緒で、プランニングを依頼したそうだ。
 Mさん夫妻の希望は、「人目を気にしなくてもいい開放的な家」。「窓を開けて、風が通る中で暮らしたかったんです」とSさん。とは言え、土地は官庁街に近い住宅密集地の46坪。比較的、緑が多いとはいえ、外(北側)に開くと通行人の視線が気になり、内(南側)に開くと隣の家の背面。そんな条件下、花田順さんの回答は、「空に開く」というものだった。
 2階リビングにして、屋根のこう配を利用したハイサイド窓を南面に設置。窓からはプラタナスの緑と空が広がる。「最初、ご夫婦から『土地も狭くて、北側に開くしかないと思うんですけど』と伺ったんです。秋田という土地柄、北側に開くには冬の問題もあるし、何より大きな建物もあって外からの視線を遮ると開放感が犠牲になりかねない。そうしたら、南側にプラタナスも見えて、空が抜けていたんです」と花田さん。北側に開かざるを得ないと思い込んでいたMさん夫妻、南側に開きながら希望を叶える提案に驚いたという。さらに、入居した3月にはハイサイド窓からの日射が室内に入り込んで明るく、暖かかったリビングが、南中高度が上がるにつれて庇が日射を遮り、室内も暑くならないという。「暮らしながら気付く花田さんの設計にも驚きです」とSさん。
 「出会いの中でしかできない家があって、僕らは花田さんと出会って良かった。妻に感謝ですね」とMさん。Sさんも、「不思議なことに、何年も住んでいるような気分です。」と暮らし方と自然にフィットする家に満足げだ。

DATA
床材無垢3層フローリング(ナラ)
壁材ペンキ(PORTER'S PAINTS/FARROW&BALL)、ビニールクロス
窓仕様アルミ樹脂複合サッシ Low-Eペアガラス(防火対応)
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材塗り(ジョリパット)、ガルバリウム鋼板、窯業系サイディング(防火対応)
断熱材グラスウール

設計 / 有限会社花田設計事務所 | 施工 / 株式会社石川建設 | 竣工 / 2016/3
構造・工法・規模 / 木造軸組工法・2階建 | 敷地面積 / 152.76㎡(46.21坪) | 床面積 / 138.29㎡(41.83坪) / 1階 51.76㎡(15.66坪) 2階 66.25㎡(20.04坪) ビルトインガレージ 20.28㎡(6.13坪) バルコニー 8.69㎡(2.26坪)

暖房設備 / 床暖房(ガス) | 給湯設備 / エコジョーズ | バス / TOTO サザナ | トイレ / 1階 TOTO GG 2階 TOTO ネオレスト | キッチン / クリナップ S.S. | 調理設備 / ガス | 換気システム / 第3種換気

建築総工費 / 2,800万円台
坪単価 / 65~70万円