WORKS JUU掲載の施工事例

CASE04 花田設計事務所 / N邸

セオリーに縛られない、人生を豊かにするガレージハウス

 「建築家との家づくり」というと構えてしまうような気もするが、建築家の花田順さんは、「住宅は、お住まいになる方たち本人が気楽に使えて、画鋲もさせるような親近感があることがまずは大事」と力強く話す。「建築家との家づくりで『無垢材じゃないとダメだ』と何かを押し付けるということはありえません。家は住む人のもの。住む人たちの価値観に寄り添ったものをつくるのが僕たち建築家の仕事だと思っています。Nさん一家はバランス感覚が絶妙な家族で、それがこの家に現れていますよね(花田さん)」。
 玄関のアプローチから、ガレージにあるNさんの愛車が見える。学生時代から乗っているというカルマンギアは、エンジンとメーターをすべて移植しての3台目だというから、その車への愛はかなりのものだ。そんなNさんだから、家を建てようと思ったきっかけも「青空駐車がかわいそうだったから」。妻のEさんは「出会った頃からの夫の趣味ですから」と笑うが、建築家の花田夫妻は「車をここまで大切にされている方が、自邸を持つのならばガレージハウスをとおっしゃるのはいわば必然。車も家族みたいな扱いなわけで、重さが全然違うんです。ならば家もその思いの集積にちゃんと答えるものであるべきだと思って、設計しました」と語る。
 家を建てるなら建築家との家づくりになるだろうとは思っていたというN夫妻だが、住宅雑誌を見ていた長女が「こんなおうちに住みたい」と指差したのが、花田夫妻の設計した家だったというから、そのセンスの良さは瞠目に価する。果たしてはじめての打ち合わせから花田夫妻とNさん一家は意気投合した。 「言葉足らずながらお伝えしたことを、花田夫妻が十二分に汲み取ってくださいました。かたちになってみたら、自分たちのイメージを超えるほどいい家で、本当にお願いしてよかったです」とEさん。ガレージ以外にも、一家で年に一度は旅行するほど好きという沖縄の海の色をイメージした青をアクセントカラーに使用したり、アンティークの家具を集めるのが趣味であるというEさんの好みにあった内装の配色など、細かなところに至るまで、一家の好みが反映されている。
 住宅建築に花田夫妻がより気を使っているのは、住む人がくつろいで暮らせるか、そして向こう三軒両隣にも歓迎されるようなつくりであるか、ということ。「両隣の家々からも『借景の桜の花、今年も見えてうれしかったわ』と言われたんですよ」というEさんの言葉からも、多角的に「本当の住みやすさ」を考慮された住まいであることが伝わってくる。

DATA
床材ウォルナット3層無垢フローリング エイジング加工、Pタイル(水回り)
壁材クロス、モザイクタイル(キッチン)
窓仕様アルミ樹脂複合サッシLow-Eペアガラス(防火仕様)
屋根材ガルバリウム鋼板
外壁材ガルバリウム鋼板、ジョリパット

設計 / 有限会社花田設計事務所 | 施工 / 株式会社石川建設 | 竣工 / 2015/2
構造・工法・規模 / 木造・在来工法・2階建 | 敷地面積 / 254.94㎡(約77坪) | 床面積 / 157.90㎡(約48坪)/ 1階 109.42㎡(約33坪)/ 2階 48.48㎡(約15坪)

暖房設備 / ガスヒートポンプ式温水床暖房 | 給湯設備 / エコジョーズ | バス / TOTO ハーフバス オリジナル造作 (青森ヒバ) | トイレ / LIXIL サティス | キッチン / サンワカンパニー グラッド45 | 調理設備 / ガス

建築総工費 / 3,200万円台
坪単価 / 65~70万円